エステル記から学ぶ福音とキリスト者の勝利

クリスチャンの成長
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エステル記には、バビロン捕囚から帰還せず、ペルシャ帝国に残留したユダヤ人が、民族絶滅の危機を乗り越えたという歴史的事実が記録されています。ペルシャ領土内のユダヤ人たちは、自分たちを憎み、滅ぼそうとする宿敵ハマンの陰謀を覆し、いのちを奪おうとする者たちと勇敢に戦い、完全勝利を果たしました。

ハマンが発布した「ペルシャ帝国内に住む諸民族は、ユダヤ人を全滅させなければならない」という法令は、この世には、神の民を滅ぼそうとする見えない霊的な法則が働いていることを暗示しています。そしてモルデカイが発布した「ペルシャ帝国内のユダヤ人は、戦って自分たちのいのちを救え」という法令は、不利な法則を打ち破るさらに優れた法則があり、その法則に従って戦う者は勝利していのちを得ることができることを教えています。

この記事では、エステル記に記録されたユダヤ民族の戦いと勝利の歴史から、人類を滅びに引き込む悪の力にいかに立ち向かい、勝利するかを学びます。

1.エステル記の背景にある霊的戦い

初めに、この物語の登場人物と、ユダヤ人滅亡計画に至る霊的背景を考えてみましょう。

① 登場人物

クセルクセス王(アハシュエロス王)

ホドからクシュまで127州(パキスタン~リビア・スーダン・エチオピア)を治めたペルシャとメディアの王。「王」は原語では「ハ・メレフ」で、クセルクセス王を指すとともに、天地を支配する神を暗示している。
絶大な権力、栄華、富を誇って180日間の宴会を設けたが、王妃ワシュティが王の命令を拒んで謁見に来なかったため、彼女を退け、ユダヤ人エステルを新しい王妃に指名した。

エステル

ペルシャ名で「星」という意味、ユダヤ名「ハダサ(=ミルトスの木)」。孤児、モルデカイの従妹で養女。美しく、慎ましく、全ての人に愛され、クセルクセス王の好意と恵みを受け、王妃に選ばれた(BC479年)。
モルデカイの戒めに従ってユダヤ人の身分を隠していたが、ペルシャ帝国内のユダヤ人滅亡の危機に際し、「王妃の身分が与えられたのはユダヤ民族を救うためである」と諭され、使命を受け取る。断食し、自分がユダヤ民族である事を明かして、同族の救いを王に願い、恵みを受けて聞き入れられた。

モルデカイ

ベニヤミン人キシュの子シムイの子ヤイルの子。王妃エステルの従兄で育ての親。
知恵があり、正しく、有能。神に忠実で人を恐れず、人間を礼拝しない。王の門の前で仕え、王に対する暗殺計画を防いだことがある。
ハマンの陰謀が暴かれた後、ハマンに代わって権力者の地位が与えられ、王の代理として、ペルシャ在住のユダヤ民族が自分のいのちを救うために戦うことを命じる勅令を発布した。

ハマン

アマレク人の王アガグの子孫であったと考えられている。アマレクはエサウの子孫。
大臣である自分に跪かないモルデカイを憎み、ユダヤ人全滅を企む。ユダヤ人について王に中傷し、アダルの月(第12の月)の13日にユダヤ人を根絶せよという勅令を発布した。
クセルクセス王がエステルの嘆願を聞き入れたため、地位と財産を没収され、モルデカイを処刑しようと準備していた柱に架けられて処刑された。

比喩的に、クセルクセス王は父なる神様の型モルデカイはイエス様の型ハマンは反キリスト(サタン)の型、そしてエステルは神とイエス様に忠実なエクレシア(花嫁、教会)の型であると考えることができます。

② エステル記に至る歴史的経緯

ハマンの先祖であるアガグはアマレク人であり、アマレクはエサウの子孫です。エサウがヤコブに長子の権利を奪われたことから、ヤコブに対するエサウの恨み、憎しみが子孫に受け継がれ、ハマンのユダヤ人に対する憎しみに繋がっていると推測されます。

アガグは、出エジプト時代のアマレク人の王(民数記24:7)の名前です。 出エジプト17章には、アマレクの攻撃に対し、モーセとアロンとフルの執り成しにより、ヨシュア軍が勝利したことが記録されています。
申命記17:14~16で、主はモーセに、「わたしはアマレクの記憶を天の下から完全に消し去る」と宣言され、モーセも「主は代々にわたりアマレクと戦われる」と応答しました。
アマレクはイスラエルの宿敵であり、主の敵なのです。
主はアマレクを大変憎み、アマレクの聖絶を命じられています。

申命記25:17~19
 覚えていなさい。あなたがたがエジプトから出て来たとき、その道中でアマレクがあなたにしたことを。彼らは神を恐れることなく、あなたが疲れて弱っているときに、道であなたに会い、あなたのうしろの落伍者をすべて切り倒したのである。あなたの神、主が相続地としてあなたに与えて所有させようとしておられる地で、あなたの神、が周囲のすべての敵からあなたを守って、安息を与えられるようになったときには、あなたはアマレクの記憶を天の下から消し去らなければならない。このことを忘れてはならない。

アマレクは神を畏れることがないので、約束の地から追い出し、記憶すら消し去らなければなりません。

サウル王の時代にも、アガグという名のアマレク人の王がいました(Ⅰサムエル5:8)。
Ⅰサムエル15章には、サウル王が主の命令に従わず、アガグを生かし、アマレクを聖絶しなかったので、アマレクは後までイスラエルに敵対したと記されています。
サウル王の不従順ゆえ、アガグの子孫のハマンが生き延びたのではないか、サウルがキシュの子であり、モルデカイもキシュの子孫であったので、ハマンはモルデカイとユダヤ民族を恨み、全滅を測ったのではないかと推測されています。

ハマンがユダヤ人皆殺しを企んだ理由として、ヤコブの子孫に対するエサウの子孫の憎しみ出エジプト時代から続くユダヤ人とアマレク人の確執があると思われますが、その背後で、神の御計画を破壊し、イスラエル民族を滅ぼしてメシア来臨を阻止しようとする悪魔が、憎しみを持つ人々を通して働いていると考えられます。

2.ご計画を実現される神様の摂理

① 神の選びと備え

エステル記には「神」という言葉は出て来ませんが、異邦人社会にあって神の選民を守り導く、目に見えない神の御手を見ることができます。全ての出来事、状況、人間の行動は神の支配下にあり、全ての出来事は神のご計画の中で、神の御心に従って進められていきます。

ユダヤ人のエステルは、クセルクセス王に退けられた王妃ワシュティに代わって、新しい王妃に選ばれました。その選びは、ユダヤ人絶滅の危機が迫るこのような時のため4:13,14)」でした。

主の御計画に従って選ばれ、神の国における自分の役割と目的を知っている者は、危険と困難を顧みず、人生の優先順位を定め、使命に従うことができます。エステルはユダヤ民族を救うために断食し、死を覚悟して王に謁見し(4:16)、侍女たちとペルシャ中のユダヤ人も断食してエステルを支えました。

エステル記には「祈り」「信仰」という表現も使われていませんが、断食は祈りを表しています。またエステルが死を覚悟して王に嘆願したのは、神はあわれみと恵みに富む善なる方で、ご自分の民を救ってくださるという信仰があったからです

② ご自分のご計画に従って働かれる神

エステルはユダヤ民族のいのちを救ってくれるように王に懇願し、モルデカイは王の代理として、いのちを守るために戦うことをユダヤ民族に命じました。そしてユダヤ民族は勇気を得て決戦の日に備え、命懸けで戦い抜きました。

モルデカイの新しい大臣への任命は神のスケジュール、神のタイミングで実現しました

・王に対する殺害計画があることをモルデカイがエステルに伝え、殺害が未然に防がれたことが年代記に記録されるが、栄誉が与えらなかった。
・王は眠れなかったので年代記を読ませ、モルデカイの功績を知った。彼に栄誉を授けようと考えた王は、モルデカイを憎むハマンにその役割をさせた。その方法は、ハマン自身が栄誉を授けてほしいと考えた方法だった。
・ハマンはモルデカイを処刑するために柱を立てたが、陰謀が暴かれた後、ハマン自身がその柱で処刑され、モルデカイがハマンの地位に就任した。

イスラエルの神だけを礼拝し、ハマンに跪かなかったモルデカイは彼の怒りを買いましたが、神はクセルクセス王を通してハマンの陰謀を彼の頭上に返し、モルデカイを王に次ぐ地位に昇進させました。神はご自分の民にとって不利な状況、危機的状況をひっくり返し、良いことに変えてくださいました。人間の目には不思議でも、神の計画に偶然はありません。

神は予知し、布石を置き、伏線を敷き、自然界・人間社会のすべてのことを用いて、ご自身の目的を達成されます。神は人間の営みや歴史に介入され、ご自分に忠実な人々を通して、民にいのちと祝福を与えてくださいます。神は主権をもって被造物の世界を導き人類の歴史の中で摂理的に働かれていのです。

③ 神に選ばれたエクレシアの使命

エステル4:14
「もし、あなたがこのような時に沈黙を守るなら、別の所から助けと救いがユダヤ人のために起ころう。しかし、あなたも、あなたの父の家も滅びるだろう。あなたがこの王国に来たのは、もしかすると、このような時のためかもしれない。」

エステルがユダヤ民族の救いのために王妃に選ばれたように、私たちもこの時代に神様の働きをするために、神によって選ばれ、召し出されました。私たちの人生には神様のご計画と目的があります。

ヨハネ15:16
あなたがたがわたしを選んだのではなく、わたしがあなたがたを選び、あなたがたを任命しました。それは、あなたがたが行って実を結び、その実が残るようになるため、また、あなたがたがわたしの名によって父に求めるものをすべて、父が与えてくださるようになるためです。

父なる神様は私たちの祈りを聞いて下さり、イエス様が私たちに戦略を授けてくださいます。私たちは滅びゆこうとする人々のいのちが救われるように神に祈り、キリストの使節として遣わされ、いのちの御言葉を語らなければなりません。
そして福音を聞いて信じた人は、悪魔の惑わしと支配に抵抗し、最後まで信仰の戦いを勇敢に戦い抜かなければなりません。一人一人に勝利すべき課題があり、勝ち取るべき魂が委ねられているのです。

3.取り消すことのできない2つの法令

ハマンが王の名前で発布した法令の内容と、モルデカイが同じ王の名前で発布した法令の内容は、正反対で矛盾し、対立するものでした。私たちの住む世界にも、矛盾する2つの法則が働いています。

① ハマンの法令を打ち破る、モルデカイの新しい法令

 第1の法令3:12~15)は、ハマンがユダヤ人殲滅を命じた「死と災いをもたらす書簡」で、「アダルの月13日の一日のうちに、若い者も年よりも、子どもも女も、すべてのユダヤ人を根絶やしにし、殺害し、滅ぼし、彼らの家財をかすめ奪え」という内容でした。

クセルクセス王の名で書き、王の指輪で印が押された勅書は、取り消すことができません。王の法令は、一度発布されたなら、王自身にも変更できないのです。

ユダヤ人が自分のいのちを守るためには、その法令に対抗できる別の法令が必要でした。

第2の法令8:9~14)はモルデカイによって発布されました。それは、ユダヤ人が自分の命を守るために、自分たちを襲う民や州の軍隊を虐殺し、滅ぼし、家財をかすめ奪うことを許可する「いのちと幸いを伝える書簡」でした。

モルデカイが王から与えられた権威を用いて発布した新しい法令は、すべてのユダヤ人に伝えられなければなりません。そしてユダヤ人が自分のいのちを守るためには、新しい法令に従って自ら敵と戦わなければなりません。知っていても、戦わないなら殺されてしまうのです。

この対立する二つの法令は、ユダヤ人だけでなく人類全体を滅びに向かわせる法則と、それを打ち壊していのちへと導く新しい法則があることを暗示しています。

② 対立する2つの法則

この世界には、万物の創造者である神の支配下で、2つの対立する法則(律法・原理)が働いています。一つは永遠の滅びへ導く「罪と死の律法(原理)」、もう一つは永遠のいのちと祝福へ導く「いのちの御霊の律法」です。アダムの罪以来、人類は「罪と死の律法」の支配下にあり、全ての人が死という報いを受けなければなりません。

イスラエル民族は神と契約を結んだ民です。モーセを介して与えられたトーラー(神の戒め、教え、命令、律法)を守り行うなら生きることができますが、誰も完全に守ることができないので、結果的に罪に定められ、死ななければなりません。神がイスラエル民族と結ばれた初めの契約(律法を基準とした祝福と呪いの契約)は、諸民族にも当てはまる法則です。罪を犯す全ての人は死ななければならないのです。

罪人に不利なこの古い契約を終わらせるため、イエス様が十字架で全ての罪人の身代わりに死なれて「罪と死の律法」の要求を満たしてくださいました。そして死からよみがえって、イエスをキリストと信じる罪人を生かす新しい契約を発布し「いのちの御霊の律法」を有効化してくださいました。

いのちの御霊の律法を自分に適用する方法はキリストの死と復活に一体化することです。それは、古い自分が罪のためにキリストとともに裁かれて死に、キリストの復活とともに、罪の無い新しい人として生まれたと信じることです。

十字架の贖いによって有効になった新しい契約(キリストの恵みによる救い)は、滅ぶべき者から呪いと永遠の裁きを取り除き永遠のいのちと祝福を得させます。イエスを神の子・キリストと信じる者の罪は赦され、キリストの御霊が与えられ、「いのちの御霊の原理によって罪と死の力に勝利し、永遠のいのちを得ることが可能になったのです。

ローマ8:1~4
こういうわけで、今や、キリスト・イエスにある者が罪に定められることは決してありません。なぜなら、キリスト・イエスにあるいのちの御霊の律法が、罪と死の律法からあなたを解放したからです。肉によって弱くなったため、律法にできなくなったことを、神はしてくださいました。神はご自分の御子を、罪深い肉と同じような形で、罪のきよめのために遣わし、肉において罪を処罰されたのです。それは、肉に従わず御霊に従って歩む私たちのうちに、律法の要求が満たされるためなのです。

モルデカイの法令がユダヤ民族を死からいのちへと導いたように、新しい契約は「罪と死の律法」を無効にし、「いのちの御霊の律法」によって、死の力に怯えていた人々をキリストにある新しい命へと移すのです。

4.世の終わりまで続く反キリスト勢力との戦い

① 問題の本質は霊的世界の戦い

ハマンがユダヤ人滅亡を謀った理由としてユダヤ民族とアマレク人との間に続く対立があり、その背後には、神と神の民を憎む悪魔の存在があります。

エペソ6:12
私たちの格闘は血肉に対するものではなく、支配、力、この暗闇の世界の支配者たち、また天上にいるもろもろの悪霊に対するものです。

被支配民であるユダヤ人たちは団結し、ペルシャ帝国内の諸民族と戦いました。弱小民族の彼らが大勢の敵と戦って勝利することができたのは、神の霊が力強く働かれていたからです。神は、迫害・患難・危機の中でユダヤ人とともにおられ、守ってくださいました。

神の民に対する試練や迫害、現実世界で起こる諸問題は、霊的世界の戦いを反映しています。 私たちの戦いは、背後で暗闇の世界を支配している悪魔と悪霊どもに対する戦いであることを理解する必要があります。

② アブラハムの肉の子孫イスラエルに起こる事は、霊的子孫・教会にも起こる

悪魔の怒りと諸民族の妬み・憎しみは、イスラエル民族だけでなく、真の神を礼拝するクリスチャンにも向けられています。神は信仰者を守るために働かれ、私たちを戦いに備えさせ、滅びから守ってくださいます。私たちがキリストから知恵を頂き、キリストのためにいのちを捨てるほどの勇気をもって行動する時、神の力が働き、悪魔の策略に打ち勝つことができます。

エペソ6:13~18
ですから、邪悪な日に際して対抗できるように、また、一切を成し遂げて堅く立つことができるように、神のすべての武具を取りなさい。そして、堅く立ちなさい。
腰には真理の帯を締め、胸には正義の胸当てを着け、足には平和の福音の備えをはきなさい。これらすべての上に、信仰の盾を取りなさい。それによって、悪い者が放つ火矢をすべて消すことができます。
救いのかぶとをかぶり、御霊の剣、すなわち神のことばを取りなさい。
あらゆる祈りと願いによって、どんなときにも御霊によって祈りなさい。そのために、目を覚ましていて、すべての聖徒のために、忍耐の限りを尽くして祈りなさい。

世の終わりまで信仰の戦いが続きますが、人類を亡ぼそうとする悪魔の計画は最終的に打ち砕かれ、神の人類救済計画が完成します。クリスチャンは罪と死の力に対して完全に勝利し、「永遠のいのちと永遠の神の御国」を受け継ぐことになるのです。

5.プリムの日のユダヤ人逆転勝利と、キリストによる最終的勝利

① 信仰・希望・愛、知恵と勇気に満ちて行動する者の勝利

エステルは自分だけが助かれば良いと考えたのではなく、同胞のいのちを救うために死を覚悟してクセルクセス王に嘆願しました。そのために自ら断食して神に祈り、ユダヤ人たちも断食して神にあわれみを願い求めました。

モルデカイはエステルを誰からも愛される優れた女性に養育し、王妃に選ばれたエステルに神から与えられた使命を悟らせました。また彼は神に忠実で罪を犯さず、王にも忠実に仕えて暗殺を防ぎ、後に大臣の地位が与えられました。
彼は自分の民族を愛し、王の代理として法令を発布し、ユダヤ民族が戦って生きることができるという希望を与えました。

それはユダヤ人にとって「光と喜び、歓喜と栄誉」となり(8:16)、嘆き悲しんでいたユダヤ人たちはモルデカイの勅令に勇気を得て、戦いの日に備え、命懸けで戦い抜きました。神に信頼し、行動し、勝利する選民の生き方をそこに見ることができます。

モルデカイは王宮で勢力を伸ばし、その名声は全ての州に広がり、諸州の首長、太守、総督、王の役人はモルデカイを恐れて、皆ユダヤ人たちを支援しました。そしてユダヤ人への恐れが全ての民族に下り、ユダヤ人に抵抗する者はなく、ユダヤ人の敵は滅ぼされ、ハマンの息子たちもみな殺されました(9:1~5)。
主は、アマレクの名を天の下から消し去られたのです。

王に重んじられたモルデカイの偉大さについての詳細は、「メディアとペルシャの王の暦代誌」に記され(10:2)、モルデカイは王の次の位にあって勢力を増し、多くの同胞たちに敬愛されました彼は自分の民の幸福を求め、自分の全民族に平和を語りました10:3)。

モルデカイは、神の民を正しく治め、真の平和を実現してくださる御子イエス様の型です。

② プリムの祭りの成就: 主の日の最終的勝利と永遠の神の国

ユダヤ人が全滅の危機を免れ、逆転勝利したことを記念して「プリムの祭り」が制定されました(エステル9:20)。プリムは「プル(くじ)」の複数形で、ユダヤ人を滅ぼす日を決めるために、くじを引いたことから名づけられました。

第1回目のプリムの祭りは、BC473年アダル(第12月)の14日で、ペルシャの首都シュシャンでは2日間の戦いの後、15日に実施されました。
プリムはイスラエルの宗教暦(聖書に記されたとおりの春から始まる暦)では1年の最後の祭りで、自分たちの敵から安息を得た日、悲しみが喜びに、喪が祝いの日に代わったことを記念する祝宴と喜びの日です。この事件はユダヤ民族の歴史に残り、アダルの13日は「エステルの断食日」として、14日と15日は「プリムの祭り」として語り継がれ、守られています。

イスラエルにとって、プリムの祭りが最終的に成就するのは、イエス様が再臨され、全ての敵(反キリストとその軍隊)を裁かれた後の「神の国=キリストの王国においてです。プリムの戦いは、世の終わりの最終戦争を予表しています。

ゼカリヤ12~14章には、その最後の戦いについて預言されています。

全ての国々がエルサレムを攻撃するために集まって来ます12:3)。
ユダの家とエルサレムの住民は、主によって力を得て敵と戦います12:5~8)。
・最終的には主が出て来られてエルサレムを攻撃する国々と戦われ(14:3)、根絶やしにされます(12:9)
・それはただ1日の出来事です(14:7)。
・主の日の戦いの結果、主は地の全てを治める王となられ、主は唯一人、御名も唯一つとなります14:9)。
・エルサレムからいのちの水が流れ出て(14:8)もはや聖絶の物はなく、エルサレムは安らかに住みます(14:11)
エルサレムに攻めて来たすべての民のうち、生き残った者はみな、毎年、万軍の主である王を礼拝し、仮庵の祭りを祝うために上って来ます(ゼカリヤ14:16)。

クリスチャンはイスラエル民族とともに勝利し、全ての敵から解放されて永遠の神の国で安息し、とこしえの喜びと祝福を享受することができます。

・主の再臨により、イスラエルとエクレシアの敵(偽キリスト、偽預言者、反キリスト軍)が滅ぼされ、サタンが閉じ込められます。
・義人が復活し、贖われた民が栄光のからだに変えられ、永遠のいのちが実現します。
罪と死に対する私たちの最終的勝利が確定し、救いが完成、永遠の神の国が到来します。

神の民は、栄誉祝福を受け取って、花婿とともに婚礼の祝宴マタイ25:10)をとこしえに喜び楽しむことができるのです。

 エステル記に記されたユダヤ人勝利の歴史は、人類は神の恵みによって滅びの運命から救出され、信仰の戦いを経て永遠のいのちを得ることができることを予表しています。
そしてエステルとユダヤ人たちの勝利は、キリストを信じる者の完全勝利を予表しています。私たちは主が来られるまで、信仰の戦いを勇敢に戦い抜かなければなりません。
最終的に、神の敵であり、神の民の宿敵である悪魔はゲヘナに投げ込まれ、その記憶は天の下から完全に消し去られてしまうのです。

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