再臨と終末(7)ダニエルの終末預言「荒らす憎むべき者」に備える

終末論
エルサレム神殿
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イエス様は弟子たちに、世の終わりの前兆と主の再臨に至るまでの出来事について教えをされました。そして、ダニエルの語った「荒らす憎むべき者」が聖なる所に立つと、人類史上かつてなかったほどの苦難の時代が来ると警告されました。
ダニエルは世の終わりの出来事について、いくつかの幻と啓示を書物に書き残しました。その幻と啓示がイスラエルの歴史の中でどのように実現したかを学び、やがて現れる「荒らす憎むべき者」と終末の出来事について心を備えたいと思います。

1.イスラエルの歴史に現れた「荒らす憎むべき者」

マタイ24:15~16、21~22
 それゆえ、預言者ダニエルによって語られたあの『荒らす憎むべき者』が、聖なる所に立つのを見たならば、(読者はよく読み取るように。) その時は、ユダヤにいる人々は山へ逃げなさい。・・・そのときには、世の初めから、今に至るまで、いまだかつてなかったような、またこれからもないような、ひどい苦難があるからです。もし、その日数が少なくされなかったら、ひとりとして救われる者はないでしょう。しかし、選ばれた者のために、その日数は少なくされます。

荒らす憎むべき者の幻と説明は、ダニエル書7章、8章、9章、11章に記されています。それによると、荒らす憎むべき者は、聖書の神と聖徒たちと聖なる契約を憎み、時と法則を変えようとし、エルサレム神殿を蹂躙し、聖書信仰を迫害して聖徒たちを苦しめます。そのような人物が聖なる所神殿に立つという出来事は、イスラエルの歴史上、2回起こりました。

① アンティオコス四世・エピファネス

まず、イエス様初臨以前の「荒らす憎むべき者」について見ます。

 ダニエル8:9~12
 そのうちの一本の角から、また一本の小さな角が芽を出して、南と、東と、麗しい国とに向かって、非常に大きくなっていった。それは大きくなって、天の軍勢に達し、星の軍勢のうちの幾つかを地に落として、これを踏みにじり、軍勢の長にまでのし上がった。それによって、常供のささげ物は取り上げられ、その聖所の基はくつがえされる。軍勢は渡され、常供のささげ物に代えてそむきの罪がささげられた。その角は真理を地に投げ捨て、ほしいままにふるまって、それを成し遂げた。

一本の角から出たもう一本の小さな角荒らす憎むべき者を指しています。麗しい国はイスラエルです。
アレクサンダー大王の死後、ギリシャ帝国では4本の角(4人の将軍)が覇権争いをした結果、セレウコス朝シリアプトレマイオス朝エジプトアンティゴノス朝マケドニアに分裂しました。一本の小さな角は、セレウコス朝シリアの8代目の王であるアンティオコス四世・エピファネスです。

BC167年、エピファネス王となって現れた神という意味、在位はBC175~163年)は、エルサレム神殿にゼウス神を置き、豚を捧げさせました。彼はまた、自分を神として礼拝するように強要しました(聖所の基はくつがえされ、そむきの罪がささげられた)。

詳細がダニエル11:21~39に説明されています。

ダニエル11:21、30~31
 彼に代わって、ひとりの卑劣な者が起こる。彼には国の尊厳は与えられないが、彼は不意にやって来て、巧言を使って国を堅く握る。・・・・キティムの船が彼に立ち向かって来るので、彼は落胆して引き返し、聖なる契約にいきりたち、ほしいままにふるまう。彼は帰って行って、その聖なる契約を捨てた者たちを重く取り立てるようになる。彼の軍隊は立ち上がり、聖所ととりでを汚し、常供のささげ物を取り除き、荒らす忌むべきものを据える。

この卑劣な者(エピファネス)は、BC171年、南の王(エジプト、プトレマイオス朝)と戦うために出兵し、勝利して高ぶり、その帰り道でエルサレムに侵入し、ユダヤ人8万人を殺害し、4万人を捕囚にしました(11:25~28)。

BC168年に2度目のエジプト侵入をローマ(キティム)の軍艇に邪魔されて失敗します。その腹いせに、エルサレムの城壁(とりで)を破壊し、家々に放火し、至聖所にゼウス神(荒らす忌むべきもの)を据えて礼拝させ、聖書に命じられた捧げものの代わりに、汚れた動物を捧げさせました(11:29~31)。また、ユダヤ教の信仰(割礼・安息日順守・トーラー朗読)を禁止し、従わない者たちを虐殺しました。

その迫害下、ユダヤ人の中から聖なる契約(モーセ契約・聖書信仰)を捨てる者が現れました。背教者たちは金と地位で誘惑され、ヘレニズム化(ユダヤのギリシャ化)を推し進めていきました。

ダニエル11:32~35
 彼は契約を犯す者たちを巧言をもって堕落させるが、自分の神を知る人たちは、堅く立って事を行う。民の中の思慮深い人たちは、多くの人を悟らせる。彼らは、長い間、剣にかかり、火に焼かれ、とりことなり、かすめ奪われて倒れる。彼らが倒れるとき、彼らへの助けは少ないが、多くの人は、巧言を使って思慮深い人につく。思慮深い人のうちのある者は、終わりの時までに彼らを練り、清め、白くするために倒れるが、それは、定めの時がまだ来ないからである。

ハスモン家(マカバイ一族)の祭司マタテヤのもとに、ヤハゥエ信仰を堅く守るユダヤ人(自分の神を知る人たち)が結集・蜂起して抵抗し、ユダヤ独立戦争(マカバイ戦争)が起こります。マタテアの死後、3男ユダ(あだ名はマカビー:鉄槌)が指揮を取り、抗戦しましたが、マタテアの5人の息子のうち2人は裏切りました。
BC164年、ユダヤ軍はセレウコス軍を撃破・駆逐してユダヤの統治権を取り戻し、450年ぶりにユダヤの独立を果たしました。この時の勝利を記念するユダヤの祭りが「宮聖めの祭り」です。

城壁が破壊され、エルサレムが踏みにじられた苦難の期間はBC171~164まで約7年間、神殿が汚された期間は、BC167年中頃~164年12月までの約3年半でした。神殿が汚され、聖書信仰が破壊されることは、イスラエル民族のアイデンティティと国家存続の目的を破壊されることでもありました。

聖所に「荒らす忌むべきものを据える」ことは、将来も起こると預言されています(12:11)。

② ローマ総督ティトス

イエス様は弟子たちに、アンティオコス四世とは別の「荒らす憎むべき者が聖なる所に立つ」と警告されました。それはイエス様の十字架から約40年後、ローマ総督ティトスによって実現しました。

イエス様はシュロの聖日(十字架の5日前)に、オリーブ山からロバの子に乗ってエルサレムに向かわれ、都を見て涙を流されました。

ルカ19:42~44
 「おまえも、もし、この日のうちに、平和のことを知っていたのなら。しかし今は、そのことがおまえの目から隠されている。やがておまえの敵が、おまえに対して塁を築き、回りを取り巻き、四方から攻め寄せ、そしておまえとその中の子どもたちを地にたたきつけ、おまえの中で、一つの石もほかの石の上に積まれたままでは残されない日が、やって来る。それはおまえが、神の訪れの時を知らなかったからだ。」

AD70年、エルサレム神殿はローマ軍によって破壊されて全焼し、サドカイ人(祭司たち)は全滅しました。その時、神殿を覆っていた金が熱で溶けて流れ出し、石と石の間に流れ込みました。兵士たちが金を取り出すために石壁を崩したので、イエス様の預言通りのことが実現しました。イエス様は、メシアを拒絶したエルサレムの都がローマ軍に滅ぼされ、神殿が崩壊することを予見して泣かれたのです。

ルカ21:20~24
 しかし、エルサレムが軍隊に囲まれるのを見たら、そのときには、その滅亡が近づいたことを悟りなさい。そのとき、ユダヤにいる人々は山へ逃げなさい。都の中にいる人々は、そこから立ちのきなさい。いなかにいる者たちは、都に入ってはいけません。これは、書かれているすべてのことが成就する報復の日だからです。その日、哀れなのは身重の女と乳飲み子を持つ女です。この地に大きな苦難が臨み、この民に御怒りが臨むからです。人々は、剣の刃に倒れ、捕虜となってあらゆる国に連れて行かれ、異邦人の時の終わるまで、エルサレムは異邦人に踏み荒らされます。

エルサレムがローマ軍に取り囲まれた時、主を信じるユダヤ人たちは、主の警告に従ってエルサレムを脱出して山へ逃げ、いのちを救うことができました。エルサレム神殿はローマ軍によって完全に破壊され、それ以降、イスラエル国家は滅亡し、ユダヤ人は世界離散してしまいました。

デイビッド・ロバーツ作 エルサレム炎上 70年ユダヤ戦争

ローマ総督ティトスによって2人目の「荒らす憎むべき者が聖なる所に立つ」ことが実現しました。この出来事は、世の終わりの出来事を表す型となっています。イエス様はオリーブ山で、最後の荒らす憎むべき者についても警告しておられたのです。

2.終末時代の「荒らす憎むべき者」

ダニエル書7章に、ダニエルの見た世の終わりの幻が記されています。

ダニエル7:7~14
7:7 その後また、私が夜の幻を見ていると、突然、第四の獣が現れた。それは恐ろしく、ものすごく、非常に強くて、大きな鉄のきばを持っており、食らって、かみ砕いて、その残りを足で踏みつけた。これは前に現れたすべての獣と異なり、十本の角を持っていた。
7:8 私がその角を注意して見ていると、その間から、もう一本の小さな角が出て来たが、その角のために、初めの角のうち三本が引き抜かれた。よく見ると、この角には、人間の目のような目があり、大きなことを語る口があった

7:9 私が見ていると、幾つかの御座が備えられ、年を経た方が座に着かれた。その衣は雪のように白く、頭の毛は混じりけのない羊の毛のようであった。御座は火の炎、その車輪は燃える火で、
7:10 火の流れがこの方の前から流れ出ていた。幾千のものがこの方に仕え、幾万のものがその前に立っていた。さばく方が座に着き、幾つかの文書が開かれた
7:11 私は、あの角が語る大きなことばの声がするので、見ていると、そのとき、その獣は殺され、からだはそこなわれて、燃える火に投げ込まれるのを見た。
7:12 残りの獣は、主権を奪われたが、いのちはその時と季節まで延ばされた。

7:13 私がまた、夜の幻を見ていると、見よ、人の子のような方が天の雲に乗って来られ、年を経た方のもとに進み、その前に導かれた。
7:14 この方に、主権と光栄と国が与えられ、諸民、諸国、諸国語の者たちがことごとく、彼に仕えることになった。その主権は永遠の主権で、過ぎ去ることがなく、その国は滅びることがない

① 十本の角を持つ獣

これは、世の終わりの裁き、獣の滅び、イエス様の再臨、永遠の御国の到来についての幻です。

・第四の獣には十本の角があり、後から本の小さい角が出てきて、その角には人間の目のような目があり、大きなことを語る口があります(7:7~8)。
・さばく方が座に着き、第四の獣は殺されて燃える火に投げ込まれます(7:11)。
・人の子のような方が天の雲に乗って来られ、永遠の主権と光栄と永遠の国が与えられ(7:13~14)、いと高き方の聖徒たちが国を受け継ぎます(7:18)。

十本の角を持つ第四の獣から出るもう一本の小さい角荒らす憎むべき者です。

ダニエル7:24~27
十本の角は、この国から立つ十人の王。彼らのあとに、もうひとりの王が立つ。彼は先の者たちと異なり、三人の王を打ち倒す。彼は、いと高き方に逆らう言葉を吐き、いと高き方の聖徒たちを滅ぼしつくそうとする。彼は時と法則を変えようとし、聖徒たちは、ひと時とふた時と半時の間、彼の手にゆだねられる。
しかし、さばきが行われ、彼の主権は奪われて、彼は永久に絶やされ、滅ぼされる。国と、主権と、天下の国々の権威とは、いと高き方の聖徒である民に与えられる。その御国は永遠の国。すべての主権は彼らに仕え、服従する。

 角を表します。1本の小さい角(もう一人の王)は、いと高き方(イスラエルの神)に逆らい、ひと時とふた時と半時(3年半)の間、聖徒たち(イスラエル民族)を滅ぼしつくそうとしますが、永久に滅ぼされてしまいます。そして聖徒たちが永遠の御国を受け継ぎ、諸国の民は聖徒たちによって治められるようになります。

このについて、さらに詳しく解説されています。

ダニエル8:23~26
 彼らの治世の終わりに、彼らのそむきが窮まるとき、横柄で狡猾なひとりの王が立つ。彼の力は強くなるが、彼自身の力によるのではない。彼は、あきれ果てるような破壊を行い、事をなして成功し、有力者たちと聖徒の民を滅ぼす。彼は悪巧みによって欺きをその手で成功させ、心は高ぶり、不意に多くの人を滅ぼし、君の君に向かって立ち上がる。しかし、人手によらずに、彼は砕かれる。先に告げられた夕と朝の幻、それは真実である。しかし、あなたはこの幻を秘めておけ。これはまだ、多くの日の後のことだから。

「彼らの治世」とは、真の神に反抗するこの世の指導者たちの時代のことです。その時代が終わろうとする時、横柄で狡猾なひとりの王、つまり最後の荒らす者が登場します。
彼は悪魔の力によって強くなり、破壊し、欺き、高ぶり、真の神を信じる者たちを迫害し、殺害します。そして君の君(イエス様)に立ち向かいますが、滅ぼされてしまいます。

先に告げられた夕と朝の幻」というのは、「常供のささげ物が取り上げられ、聖所の基がくつがえされ、荒らす者によってそむきの罪が捧げられ、聖所と軍勢が踏みにじられる」こと、つまり最後の荒らす憎むべき者が神殿を蹂躙することで、それは「二千三百の朝と夕が過ぎるまで(1150日間)」続きます(8:11~14)。

その幻は「多くの日の後のこと」で、「終わりの時のこと(8:17)」、「終わりの憤りの時に起こることで、終わりの定めの時にかかわる(8:19)」ことです。それはイエス様が再臨されて神の国が始まる直前の出来事についての幻で、私たちの時代にもまだ見ていない事柄です。

この幻はダニエルの時代にはまだ封じられていて、理解することができませんでしたが、使徒たちの時代にイエス様ご自身が開封し、黙示録の中で啓示してくださいました。

② 黙示録の獣

世の終わりになると、この世の君(悪魔)に支配された不信者たちの罪悪と神に対する反逆が頂点に達します。その時代に現れる横柄で狡猾なひとりの王は、黙示録では「」と呼ばれます。

使徒ヨハネは、黙示録13章で「十本の角を持つ獣」の支配について語っています。ヨハネの見た獣とダニエルの見た獣は、同じものであると考えられます。

大艱難時代になると、二匹の獣(反キリストと偽預言者)が42か月間(3年半)活動し、聖徒たちに打ち勝ち、あらゆる部族、民族、国民を支配するようになります。そして、獣の像を拝まない者は、みな殺されるようになります。右手か額かに刻印(獣の名、またはその名の数字666)を受けている者以外は、売買ができなくなり、獣を礼拝しない者は生きることができなくなるのです。この獣は諸国の王たちとその軍勢を率いて、天から下って来られたイエス様と戦おうとしますが、御使いによって捕らえられ、火と硫黄の燃える池に生きたまま投げ込まれます(黙示録19:11~21)。

③ 不法の人、滅びの子

パウロは艱難時代に現れる最後の「荒らす憎むべき者」を「不法の人・滅びの子」と呼びました。

Ⅱテサロニケ2:3~4、7~9
 だれにも、どのようにも、だまされないようにしなさい。なぜなら、まず背教が起こり、不法の人、すなわち滅びの子が現れなければ、主の日は来ないからです。彼は、全て神と呼ばれるもの、また礼拝されるものに反抗し、その上に自分を高く上げ、神の宮の中に座を設け、自分こそ神であると宣言します。」・・・不法の秘密はすでに働いています。しかし今は引き止める者があって、自分が取り除かれる時まで引き止めているのです。その時になると、不法の人が現れますが、主は御口の息をもって彼を殺し、来臨の輝きをもって滅ぼしてしまわれます。不法の人の到来は、サタンの働きによるのであって、あらゆる偽りの力、しるし、不思議がそれに伴い、また、滅びる人たちに対するあらゆる悪の欺きが行われます。

不法の人は世の終わりにサタンの働きによって現れ、神殿に座を設け自分が神であると宣言し、偽りの力、しるし、不思議で惑わし、あらゆる悪の欺きを行いますが、イエス様の御口の息で殺され、来臨の輝きで滅ぼされてしまいます
黙示録のは、イエス様と戦おうとしますが、御使いによって捕らえられ、火と硫黄の燃える池に生きたまま投げ込まれます。ダニエル書に出て来る横柄で狡猾なひとりの王は、君の君に向かって立ち上がり、人手によらずに砕かれます

④ 最後の荒らす憎むべき者 

ダニエル11:21~35はアンティオコス・エピファネスについて預言していましたが、11:40~45世の終わりの荒らす憎むべき者)についての記述であると考えられます。
11:36~39は、二人に共通する記述です。彼らは全ての神よりも自分を高く大いなるものとし、真の神を冒涜し、城壁のある砦(エルサレムとユダの町)を取り、自分の認める者に治めさせ、国土を分け与えます。

終わりの時、最後の荒らす憎むべき者は南の王と戦います。彼は南の国々に進軍し、麗しい国(イスラエル)に攻め入り、南の国を倒します。ルブ(リビア)とクシュ(エチオピア)は彼に従い、エドム、モアブ、アモン人の主な人々は逃げます(11:40~43)。彼は東と北からの知らせを聞いて驚き、激しく怒ります。彼は多くのものを絶滅しようとして出軍し、(地中海)と聖なる麗しい山(エルサレム)との間に陣を敷きます。この場所はメギドの丘(ハルマゲドン)であると思われます。しかし彼はついに滅ぼされてしまいます(11:45)。

ダニエル書7章の「十本の角の後に出て来るもう一本の角(王)」、8章の「横柄で狡猾な一人の王」、11章の「一人の卑劣な者」、黙示録の「」、Ⅱテサロニケ2章の「不法の人、滅びの子」はすべて、イエス様が語られた「荒らす憎むべき者」を指しています。

④ 大艱難時代と復活

ダニエル9:27
彼は一週の間、多くの者と堅い契約を結び、半週の間、いけにえとささげ物とをやめさせる。荒らす忌むべきものが翼に現れる。ついに、定められた絶滅が、荒らす者の上にふりかかる。

1週は7年間、半週は3年半です。荒らす者は7年間の契約を結び、後半の3年半は裏切ってエルサレムを蹂躙します。
ダニエル書12章には、世の終わりの3年半の苦難の時と、その後に起こる復活について記されています。 

ダニエル12:1~2、11~12
 その時、あなたの国の人々を守る大いなる君、ミカエルが立ち上がる。国が始まって以来、その時まで、かつてなかったほどの苦難の時が来る。しかし、その時、あなたの民で、あの書にしるされている者はすべて救われる。地のちりの中に眠っている者のうち、多くの者が目をさます。ある者は永遠のいのちに、ある者はそしりと永遠の忌みに。・・・・・常供のささげ物が取り除かれ、荒らす忌むべきものが据えられる時から、1290日がある。幸いなことよ。忍んで待ち、1335日に達する者は。

聖書の神に対する礼拝が禁止され、神殿に荒らす忌むべきもの(偶像)が据えられてから1290があります。イスラエル民族はかつてなかったほどの苦難を体験して砕かれます。忍耐して1335日に達する者は永遠の御国を相続することができるのです。

3.大艱難時代の持つ意味

最後の荒らす憎むべき者によって引き起こされる出来事ついて、神の視点からの4つの目的が記されています。

ダニエル9:24
 あなたの民とあなたの聖なる都については、70週が定められている。それは、そむきをやめさせ、罪を終わらせ、咎を贖い、永遠の義をもたらし、幻と預言とを確証し、至聖所に油をそそぐためである。

「あなたの民」とはイスラエル民族、「あなたの聖なる都」とはエルサレムのことです。
・イスラエル民族に、神に対するそむきをやめさせ、罪を終わらせる。
・イエス様をメシアと信じたイスラエル民族の咎を十字架の血で贖い、聖め、永遠に義とする。
・神が幻と預言で示された御計画を実現し、イスラエルの神が真の神であると世界に証明する。
・イスラエル民族を祭司の民族として回復させ、至聖所を聖別し、礼拝を回復させる。

それが実現する時は、御国が地上に到来する時です。主が再臨され、義人が復活します。最初の人アダムが罪のために失った永遠のいのちと神との親しい関係が取り戻され、神の民が神の園で永遠に神と共に生きる時代が来ます。

荒らす憎むべき者が神殿に立つのは、悪魔が神を憎み、人々に偽の神を崇めさせ、自分の滅びの巻き添えにしようとするからです。けれども、エデンの園でアダムが罪を犯した時、神が「女の子孫がヘビの頭を砕く」と語られた通り、イエス・キリストが悪魔を滅ぼされます。

大艱難時代(ヤコブの苦難の時)が訪れる理由は、イエス様の十字架の贖いを拒否し続け、自力で自分を救おうとしているイスラエル民族に、神にしか助けることのできない状況の中でメシアを求めさせ、イエス様を拒否した罪を悔い改めさせる(聖なる民の勢力を打ち砕く 12:7)ためです。生ぬるい信仰や間違った信仰に陥っていたクリスチャンも、真の聖書信仰に立ち帰るでしょう。
それは、神様の当初の計画通り、全世界に義と平和をもたらし、イスラエルと教会を祭司の王国として神に仕えさせ、神との関係を回復した人類を、神と共に永遠の御国に住まわせるためなのです。

大艱難時代には、荒らす憎むべき者が聖なる所に立ちます。ですから主が来られる前にはエサレムに神殿が建っていると考えられます。
すでに、神殿建設に必要な全ての資材はそろい、神殿祭儀に必要な全ての用具や衣服や楽器も準備され、レビ族の子孫たちは祭司として儀式を取り行うための訓練を続けています。1900年以上探し続けてきた完全な赤毛の雌牛(民数記19章、聖めに必要)も発見され、神殿建設の承認が出れば、すぐに工事に取り掛かろうと待ち構えています。神殿の礎を据えようとする正統派ユダヤ人と阻止しようとする治安部隊のもめ事も、毎年のように起こってきました。

現在は最後の1週の始まりを待っている時です(おそらく、いつ始まったか明確にわからないでしょう)。イエス様を信じるクリスチャンも、イスラエル民族とともに艱難の中で信仰が試され、練られ、聖められ、永遠にふさわしいものへと整えられていくでしょう。

ダニエル12:10
  多くの者は、身を清め、白くし、こうして練られる。悪者どもは悪を行い、ひとりも悟る者がいない。しかし、思慮深い人々は悟る。

世の終わりには、偽キリスト・偽預言者たちによる惑わしが増加します。また、多くの人の愛が冷め、自己中心の信仰に傾き、健全な聖書信仰から離れていくような時代になると主は言われました。エルサレムに神殿が建ち、すべての宗教を尊重しようというムーブメントや宗教融合が起こり、エルサレムはあらゆる宗教、あらゆる霊の混在する大淫婦バビロンとなると考えられます(参照「バビロンの起源と終末の大バビロン」「大バビロンの滅びとエルサレムの贖い」)。

真の信仰者にとって、信仰ゆえに大きな苦難を受けると考えると怖くなりますが、最後まで耐え忍ぶ人は救われます(マルコ13:13)。目を覚まして世界情勢とエルサレムを見張り、時を見分けて世の終わりに備えましょう。永遠の報いを受けるために自分自身を聖別し、御言葉を蓄えて心を整え、主の再臨を待ち望みましょう。

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